「bとdをよく間違える…」

「アルファベットの形がごちゃごちゃになる」
「行を飛ばして読んだり、飛ばして書いたりする」

このような“書字”や“読字”の悩み、
実は英語に苦手意識を持つ子どもにかなり高頻度で見られるサインです。

そしてその背景には、
文字や空間の“見え方”そのものに関わる「視空間認知」の力」が隠れています。

■ 視空間認知とは?

👉「目で見た情報を、脳で正確に位置・形・関係性として処理する力」

具体的には…

  • 文字の向き・位置を把握する
  • 行の上から下へ順に視線を移動する
  • 左右・上下の位置を保って書く
  • 同じ形の文字を区別する(例:b/d、p/q)

このような力が、英語学習において特に重要になります。

✅ 英語が「視空間的に難しい言語」である理由

工夫目的実践アイディア
文字の形を「触って覚える」(砂文字・空書き)感覚統合で形の定着を促す🔸トレイに塩や小麦粉を敷き、指でアルファベットを書く「砂文字あそび」🔸空中で大きく文字を書く「空書き」を朝の体操のように取り入れる(例:”bは大きく縦に線をひいて…くるっと丸!”)🔸モールや紙ねんどでアルファベットを「立体的に作る」ことで形への理解が深まる
1文字ずつ「向きのポイント」を明示するb=棒が左/d=棒が右、などの言語化支援🔸絵カードや色分けを使って、左右の違いを視覚的に明示(例:「bは“bat and ball”」「dは“drum and stick”」)🔸ノートにガイド線を引いて、「どっち向き?」と確認しながら書かせる習慣をつける🔸「この文字は〇から先に書くよ」と口に出して整理する
書く前に“なぞる・見る・指差す”で視覚に集中書字の前段階での視覚処理を強化🔸書く前にプリントやカードを使って、なぞり書き→指さし確認→目で追う順で練習する🔸「まずはなぞって…次に、書く場所を指でなぞって…それから書こうね」の**“視覚集中ステップ”**をルール化🔸目の動きがバラバラな子には、読みガイド(下敷きや指で押さえる)を使って行を安定させる
小さな文字・細かい行間は避ける情報量を減らして空間処理の負荷を軽減🔸ノートは「行間が広め/1文字ずつマスがある」タイプを使用🔸文字を2〜3行に分けて書かせる/1枚の紙に数語までに制限することで、情報の見通しが良くなる🔸印刷物は拡大コピーして使うと、文字や行の“密集感”を避けられる

🔍 書くのが苦手な子には「見え方の助け」から整える

「もっと練習して!」よりも、まずは“どこが見づらくなっているのか?”を探って、工夫で補ってあげることで、本人のモチベーションもぐっと上がります。

→ つまり、英語は“形の見分け力+順序の処理”が必要な言語なんです。

✅ こんな子は視空間認知の課題が関係しているかも?

  • アルファベットを覚えにくい/順序が混乱する
  • bとd、pとqの区別があいまい
  • 書くと行がずれる/文字がつながる
  • 読んでいると行を飛ばす/同じ行を読んでしまう
  • 板書に時間がかかる、抜けが多い

■ 原因は「見えていない」のではなく、「整理しにくい」だけ

これらの子どもたちは、
視力が悪いわけでも、注意力が低いわけでもありません。

「見えてるけど、“どう見えているか”がズレている」
→ それが視空間認知のズレです。

✅ 英語学習は「視空間トレーニング」にもなっている

実はアルファベットの学習や書字は、
脳の視覚処理ネットワークを鍛える訓練でもあります。

だからこそ、つまずいたときに大事なのは:

書けない=「やる気の問題」
ではなく
書けない=「脳の空間処理が混線しているかも?」

という“脳の整理の視点”です。

✅ 家庭でできるサポートのヒント

工夫目的
✅ 文字の形を「触って覚える」(砂文字・空書き)感覚統合で形の定着を促す
✅ 1文字ずつ「向きのポイント」を明示するb=棒が左/d=棒が右、などの言語化支援
✅ 書く前に“なぞる・見る・指差す”で視覚に集中書字の前段階での視覚処理を強化
✅ 小さな文字・細かい行間は避ける情報量を減らして空間処理の負荷を軽減

✅ まとめ:「書けない」は“努力不足”ではなく、“処理の仕方の違い”かもしれない

アルファベットの学習は、
単なる文字の暗記ではなく、

  • 形を見分ける
  • 空間を保って並べる
  • 書く順序を管理する

という高度な“視空間タスク”です。

だからこそ、
子どもがつまずいたときは「もっと練習」ではなく、
“どう見えてるのか?”に目を向けてみてください。