「国語の漢字は覚えられるのに、英単語だけがまったく入らない」

「英語の綴りと意味がつながらない」
「何回書いても、すぐに忘れてしまう」

そんな子どもを見て、

「英語だけ極端に苦手…?」
「そもそも覚える気がないのかも」
「反復が足りないだけ?」

と思っていませんか?

でも実はその背景にあるのは、“語学のセンス”ではなく“脳の記憶処理ルートの違い”かもしれません。

■ 英語学習=“第二言語の処理”という別世界

英語は、子どもにとって“母語ではない言語”。
つまり、処理の順序もスピードも“母語とはまったく違う脳の回路”を使います。

母語(日本語)なら:

  • 音 → 意味 → 文字
    → 頭の中にある程度“セット”で入っている

でも英語は:

  • 音→文字→意味?
  • 文字→意味→音?
    → 子どもによってルートがバラバラになりがち

ここで重要なのが、“符号化”の力

「符号化(エンコーディング)」とは:
👉 情報を覚えられる形に変換する力のこと。

つまり、ただ聞いたり見たりしただけの情報を、
「記憶として保持できる状態」に“変換”するプロセスです。

この変換がうまくいかないと:

  • 英単語の“音”と“意味”がつながらない
  • 書けるのに意味が思い出せない/逆もある
  • 日本語のように“一発記憶”できず、すぐ抜ける

✅ こんな子は“符号化の難しさ”に直面しているかも

  • 英単語は読めても意味が出てこない
  • 意味はわかってるのにスペルが思い出せない
  • 英語の暗記だけ異様に苦手
  • 単語帳が続かない/反復が無意味に感じる
  • 英語のテストになると“記憶が真っ白になる”

■ 原因は“短期記憶×処理ルートの混線”

英語学習では:

  • 音で聞く
  • 書いて覚える
  • 意味を思い出す
  • 文の中で使う

この処理をすべて“短時間で同時に”こなす必要があります。

でも短期記憶が少なめ or 整理が苦手な子は:

音 → 書く → 意味を思い出す → また音が来る
記憶の“整理棚”が埋まりすぎてパンクしてしまいます。

✅ 解決のヒントは「反復」ではなく「入力の順番」

よくある誤解:

❌ 覚えられない → もっと反復させよう
✅ 覚えられない → 処理しやすい順番に変えよう

✔ 実は、「音→意味→文字」の順番が王道ルート

子どもにとって、英語はまず「音」で感じるもの。

でも…

  • 意味がわからないまま文字だけ覚える
  • 音が曖昧なまま書く練習をさせられる
    → これでは「記憶が整理されない」→「すぐ忘れる」のループに。

✅ 家庭でできる“記憶が整理されやすい英語環境”

工夫解説実践アイディア
音→意味→文字の順でインプット意味づけができてからの文字は定着しやすい🔸最初は“英単語の音声”を聞かせてから、意味(イラスト・身振り)を伝える🔸たとえば「apple」は、まず音声だけ聞かせて、すぐに🍎を見せる → 最後にスペル「apple」を見せる🔸フォニックス絵本(例:”B is for Ball”)は、自然とこの順になっていておすすめ
絵カードやジェスチャーと一緒に英単語を導入「視覚+動き」で記憶が安定🔸自作の単語カードに、**絵+単語の音声(録音でもOK)**をセットにして見せる🔸動詞なら、必ずジェスチャーを加える(jump→ジャンプ、eat→口に手をやる)🔸「英語カルタ」や「ジェスチャービンゴ」でゲーム感覚にすると効果UP
書くより“言える”を先に音と意味の接続を強化🔸単語を何回も書く前に、「言って・使って・思い出す」練習を🔸たとえば朝の支度中に「What is this?」「It’s a hat!」のように短いQ&Aを口に出す習慣をつける🔸YouTubeなどの英語童謡(例:”What’s this?”ソング)で、聞こえた単語をリピートするだけでもOK
暗記より“使う体験”を重視文脈が記憶を助ける🔸単語だけ覚えるのではなく、日常会話の中で使う(例:水を出すときに “Here’s some water.”)🔸ぬいぐるみと「おしゃべりタイム」を作り、「What’s your name?」→「I’m Bear!」など、ロールプレイで使う🔸覚えた単語を「絵日記」や「ミニストーリー」にして、使いながら振り返る時間を設ける

🔍「覚える」のではなく、「結びつける」ことを意識しよう

英語の単語は、ただ見て書いて覚えるものではなく、「音・意味・文字」を正しい順番と体験で“つなぐ”ことが記憶定着のカギです。

■ 「覚えられない」のではなく、“処理しきれていない”だけ

英語が苦手な子は、
努力不足でも才能の差でもない。

ただ、“記憶の棚”への入れ方が違っているだけ。

✅ まとめ:「英語だけ覚えられない」は、記憶力の問題じゃない

英語学習は:

  • 短期記憶への入力
  • 入力の順番(符号化)
  • 情報整理のしやすさ

によって成否が変わります。

だからこそ、
暗記より“わかる順番”が大事。

それが、子どもにとっての「覚えられる」に変わる第一歩です。