──“聴覚弁別”と“音の持続処理”の視点から見る英語教育
「/r/と/l/の違いが聞き取れない」
「英語の発音を真似できない」
「何度聞いても、同じにしか聞こえない」
そんな子どもに対して、大人はつい
「耳が悪いのかな?」
「音感がないのでは?」
「もっと聞かせたほうがいい?」
と、“聴覚の能力そのもの”に問題があるように感じがちです。
でも実は──
耳ではなく“脳の情報処理”の側に課題がある可能性があります。
■ 「聴覚=耳がいい・悪い」ではない
人は音を「聞いている」のではなく、
聞いた音を“脳で解釈している”のです。
その中でも、英語の音認識に深く関わるのが:
- 聴覚弁別(ちょうかくべんべつ)
- 音の持続処理(Auditory temporal processing)
この2つの力です。
✅ 聴覚弁別とは?
→ 似ている音を「違う音」として区別する力
例:/r/と/l/、/b/と/v/、/s/と/sh/など
→ 日本語では区別しない音が、英語では“意味の差”になるため難易度が高い
✅ 音の持続処理とは?
→ 音の“長さ”や“変化”を時間の中で正確に処理する力
- 英語は音が連続して変化する言語(リエゾン・抑揚・タイミング)
- その変化を“持続的に”処理できないと、正確な音に聞こえない
■ /r/と/l/が区別できないのは「耳のせい」じゃない?
実は、こうした「聞き分けができない子」は、
“聴覚情報処理障害(APD)”傾向をもつケースがあるとされています。
APDの子は:
- 聞こえているのに聞き取れない
- 雑音があると話が入ってこない
- 聞いた直後に内容が抜ける
- 英語のシャドーイングが極端に苦手
👉 つまり、耳は正常でも“処理の過程”にズレがあるのです。
✅「聞こえている」と「処理できる」は別物
よくある誤解:
❌「この子、耳は正常だから大丈夫」
✅「聞こえているけど、区別できない/保持できないかもしれない」
この差に気づけるかどうかで、英語教育の方向がまったく変わります。
■ 聴覚の“能力”と“訓練”は分けて考える
「もっと英語の音に慣れさせよう」
「たくさん聞かせれば聞こえるようになる」
というのは、“耳のトレーニング”という発想ですが──
本当に必要なのは:
- “聴覚の処理精度”を見極める
- 情報処理の“負荷量”を減らす
- 発音は“模倣”ではなく“認知的整理”の支援
✅ 家庭でできる関わり方のヒント
具体的工夫 | 目的 | 実践アイディア |
---|---|---|
✅ 英語の歌や動画は“ゆっくり・はっきり”を選ぶ | 音の変化を脳が追いやすくする | 🔸『Super Simple Songs』など、歌詞がゆっくり・クリアな教材を選ぶ🔸YouTubeやNetflixでは、再生速度を0.75倍に設定して視聴する🔸セリフの少ない英語絵本の読み聞かせ音声(例:”Brown Bear, Brown Bear”)を繰り返し聴く |
✅ シャドーイングより“音のブロック化”を意識 | 単語を意味単位で捉える力を育てる | 🔸「1センテンスを3〜4語の“かたまり”に区切って読む」例:”I want / to eat / an apple.”🔸ブロックごとに、リピート&ジェスチャーを加える(”to eat”なら食べるマネ) |
✅ 英語を聞かせるときは「1つの感覚に集中」 | 映像+音声の同時処理は負荷が高い | 🔸動画を見るときは「音だけに集中する時間」を意識的につくる(例:最初は音声だけで聞かせて、その後に映像付きでもう一度)🔸CDやオーディオブックを聞く時間を日常に取り入れる(移動中や寝る前など) |
✅ 似た音のペアを“視覚+音”で一緒に教える | 弁別力を多感覚的に刺激する | 🔸「/r/と/l/」などの音ペアを、イラスト+発音動画+動作で学ぶ 例:red(赤の画像)とled(電球の画像)を見ながら音を聞き比べる🔸紙にスペルを書き、口の形を鏡で見ながら発音をまねる🔸アプリ(例:ELSA SpeakやSounds: The Pronunciation App)で音の違いを耳と目で確認する練習をする |
🔍 コツは「音を聴かせる」のではなく、「音を“処理しやすく整える”」こと
小さな工夫でも、「この子にとって音がどう聞こえているのか?」という視点を持つだけで、ぐっと効果が上がります。
🎧「家庭だけでは不安…」という方へ
ここまで読んで「なるほど」と思っていただけた方は、
きっとお子さんの「聞こえ方の違い」に寄り添いたいという想いをお持ちだと思います。
でも実際には、家庭だけでできる工夫には限りもあります。
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■ 「発音が苦手」な子は、「聞き取りが苦手」な子かもしれない
発音は、耳で“聞いて”、脳で“理解して”、口で“再現する”複雑なプロセス。
だから:
発音が下手
→ 発音練習!
…ではなく、
発音が下手
→ そもそも“音の違い”が認識できていないかも?
という視点が必要です。
✅ まとめ:「耳が悪い」のではなく、“処理の仕方”が違うだけ
英語が苦手な子は、
「聞こえていない」のではなく、「脳で処理しきれていない」ことが多い。
耳の能力を疑う前に、
“聞こえた音をどう処理しているか”に注目する。
その視点だけで、
英語の学びがぐっと優しく、効果的になります。