「大事な話をしてるのに関係ないことを言い出す」
「叱られたら急にふざける」
「問いかけたのに話題をそらす or 黙る or 話を変える」
こうした行動を見て、大人はつい――
「ごまかしてるな」
「ちゃんと向き合いなさい」
「はぐらかさないで!」
と“態度の問題”として捉えてしまいがちです。
でも実はその反応、本人の意図ではなく“脳が危険を感じてスイッチを切り替えている”防衛的な適応行動かもしれません。
■ 脳の「逃げ方」にはパターンがある
ストレスを感じたとき、脳は3つの回避反応をとります:
- 闘う(Fight)
- 逃げる(Flight)
- 固まる(Freeze)
そしてもう1つの形が、
4.「ずらす(Diversion)」=“気をそらす・話をそらす”
🧠 脳は「ストレスを処理するのではなく、避けることで守る」という方法を無意識に選ぶことがあります。
✅ チェック!“話のすり替え”が防衛反応であるサイン
- 叱った直後にふざけたり、変顔・変な声を出す
- 「なぜやったの?」→「でも〇〇くんもやってたよ!」と話題転換
- 真面目な話になると急に眠そう/無表情になる
- 質問に対して答えず、別の話題にすぐ移る
- 話の途中で急に「今日のごはん何?」など関係ないことを言う
→ これらは、ストレスを感じたときに“話題を切り替えることで身を守っている”防衛的反応の可能性があります。
✅ 背景にあるのは、“認知の過負荷”+“感情処理の未成熟”
このような行動が起きるのは、主に以下の要因が絡んでいます:
- 叱責・注意によって脳が“危機”と感じている
- 自分の非を直視することが“痛み”として処理されてしまう
- 感情をうまく整理できず、“すり替えることで回避している”
- 注意や説明の情報量が多く、認知的に処理しきれない
🧠 子どもにとっては「ごまかしてやろう」ではなく、「とにかくこの場をやりすごしたい」「これ以上受け止めたくない」という生存戦略です。
✅ 専門家の視点:「すり替え」は“脳の感情処理回避反応”
心理士・発達支援者・OT(作業療法士)は、この行動をこう見ます:
- 感情や情報が多すぎるとき、回避行動が出るのは自然な神経反応
- 話をそらすことで“自律神経の過剰反応”を抑えている場合もある
- 本人が“無意識に防衛している”ため、叱っても改善しにくい
Siegel & Bryson(脳科学に基づく子育て)
「感情の脳が圧倒されると、論理や理解を司る“上の脳”は一時的に機能しなくなる」
✅ 家庭や支援の場でできる!「話をすり替える子」への具体的対応5つ
① “話を戻す”より“感情を整える”が先
→ 「話を聞きなさい」ではなく、まず「びっくりしたよね」「ちょっとしんどいね」と脳を落ち着ける声かけ
② 切り替えが起きたら「逃げても大丈夫」とまず受け止める
→ 例:「今ちょっと話したくなかったかな?それでもOKだよ」
→ 安全が確保されると、再び“話に戻れる力”が育つ
③ 「時間差で話せる関係」を意識して育てる
→ 例:「さっきのこと、あとでゆっくり話そうね」
→ その場で解決せず、“あとから振り返る安心文化”をつくる
④ “話の長さ”と“情報の量”を減らす
→ 説明や注意は、一文ずつ・目を見ず・静かなトーンで伝えると過負荷を防げる
⑤ “戻って話せた”ときは思い切り認める
→ 「あとから話せたのすごいよ」「自分から戻ってこれたね」
→ 話を切り替えること=悪ではなく、“戻れる”力を育てることが目的
✅ よくある誤解と真実
誤解 | 実際は… |
「ふざけてごまかしてる」 | 脳がストレスから自分を守るために“無意識に逃げている” |
「真剣に話してない」 | 情報や感情が多すぎて処理できない状態かも |
「嘘をついてはぐらかしてる」 | 本人も“話をすり替えている自覚”がないことが多い |
✅ 保護者・支援者の視点転換
- “話せない子”ではなく“処理しきれなかった脳”として見る
- “戻ってこられるかどうか”が大切な成長指標になる
- 「逃げたくなる気持ち」を許してから「少しずつ戻る力」を育てる
■ まとめ:「話をすり替える子」は、“話したくない”のではなく、“今は受け止めきれない”だけかもしれない
子どもは、ごまかしたいのではなく、“それ以上は無理”という限界のサインとして、話を変えていることがあります。
だからこそ大人は、
「今は受け止められないんだね」
「落ち着いたら、また話そうね」と、“戻れる余白”を用意してあげることが大切です。