「片付けてって言ったのに、まだ遊んでる…」
- お風呂に行こうとしても動かない
- 「終わりだよ」と言っても大泣き
- 遊び→ごはん、学習→自由時間など、場面の切り替えがとにかく苦手
そんなとき、多くの大人は「頑固」「甘え」「やる気がない」と感じてしまいます。
でも実際には、“感覚のスイッチ”を切り替える力(感覚調整力)が弱いだけかもしれません。
目次
■ 「切り替え」は“神経の働き”そのもの
切り替えがうまくいかない子どもは、脳が「今いる状態」から「次の状態」への切り替えに時間とエネルギーがかかっているのです。
このとき関わっているのが、以下のような感覚・神経機能:
- 感覚統合機能(複数の感覚情報を統合して処理)
- 自律神経系(リラックス状態→緊張状態などの切り替え)
- 前頭前野の実行機能(注意の転換・計画・抑制)
✨つまり、「感情」や「意志」ではなく、“脳が今のモードから抜け出せない状態”なのです。
✅ チェック!感覚スイッチの切り替えが苦手な子の特徴
- 楽しいことをやめるとき、パニック・癇癪が起こりやすい
- 「今から●●だよ」と言われても、すぐに動けない
- 朝の身支度や就寝前など、生活の切り替えでトラブルが多い
- 頭ではわかっているのに、体がついてこない(スロースタート)
- “始めること”よりも“やめること”の方がつらそう
→ これらは、感覚や神経の“状態転換の難しさ”によるものです。
✅ 「切り替えの困難さ」は3つの側面に分かれる
種類 | 説明 | よくある例 |
感覚的切り替えの困難 | 五感の刺激が変わると不快 | 明るい部屋→暗い部屋で不安になる/服を着替えるのが苦手 |
情動的切り替えの困難 | 感情の高まりが落ち着かない | 楽しい遊びの終了でパニック/イライラが長引く |
行動的切り替えの困難 | 次の行動に移るまでに時間がかかる | 支度に時間がかかる/指示を聞いてもすぐ動けない |
✅ OT(作業療法士)や心理士が見る視点
- 感覚刺激への反応の強さ・持続性
- 切り替えの前に「身体の動き」が止められるかどうか
- “予測”と“準備”ができているか(見通し力)
- 「やめたくない」のか「やめられない」のかの区別
Dunn’s Sensory Processing Framework
「感覚過敏型・感覚追求型の子は、環境の切り替え時に“神経の再調整”が必要になるため、行動が止まりにくい」
✅ 家庭でできる!“感覚の切り替え力”を育てる方法5つ
① 「終了の予告」を必ず入れる
→ 例:「あと3回でおしまい」「タイマーが鳴ったら終わり」
→ 脳に“切り替え準備”をさせる時間を与える
② “次にすること”を視覚化する(スケジュールボード・カード)
→ 目で見えると、安心して行動の切り替えができる
③ 切り替え時に“同じ動き”を毎回入れる(スイッチ動作)
→ 例:手をパンッとたたく/深呼吸/体をゆらす → 身体から切り替える
④ “終わりの儀式”をつくる
→ 終了の歌・片付けの合図・さよならポーズなど、習慣で“終わる”を覚える
⑤ 切り替えができたら「行動」ではなく「スイッチ力」をほめる
→ 「よく終われたね」「切り替え上手だったね」
✅ よくある誤解と真実
誤解 | 実際は… |
「ワガママでやめたがらない」 | 神経的に“今から離れられない”状態かもしれない |
「言ってるのに動かない」 | 頭では理解していても、“感覚がついてこない”ことがある |
「自制心が足りない」 | 脳の切り替えスイッチがまだ未成熟なだけ |
✅ サポートする大人の姿勢
- 「できるはずなのに」ではなく「まだ難しい発達段階かも」
- “行動を止める”より“スイッチを切り替える”手助けを
- 子どもが“切り替えられた成功体験”を積めるように
(←これが最大の練習)
■ まとめ:「やめられない子」は、“次に行く準備ができていない”だけかもしれない
子どもが場面を変えられない、行動をやめられない──
それは“気持ちの問題”ではなく、“感覚と神経の状態切り替え”がまだ未熟なだけかもしれません。
その子に合った方法で「スイッチの切り替え方」を育ててあげることで、
泣かずに・怒らずに・自分で切り替えられる子へと変わっていきます。