「叱ったら急に無言に…」
「目をそらして何も答えない」
「注意すると固まってしまって会話が続かない」
こんなとき、大人はつい「反省してるんだな」「理解したんだな」と解釈してしまいます。
でも実はその“沈黙”、脳がショックや不安により「フリーズ(凍結)反応」を起こして、動けなくなっている状態かもしれません。
■ 人の脳は、ストレスを受けると「3つの防衛モード」に入る
- ファイト(闘う)
- フライト(逃げる)
- フリーズ(固まる)
この「フリーズ状態」に入ると、脳は“行動”や“言葉”を一時的に止めてしまいます。
✋つまり、「無言=反省」ではなく、
「脳が非常事態に入り、思考も表現も一時停止している」という可能性があるのです。
✅ チェック!“フリーズ型”反応をする子の特徴
- 注意された瞬間、顔の表情が固まる・目をそらす
- 声をかけても返事がない or うなずくだけ
- その場から逃げず、ただじっと止まっている
- 指示や質問に全く反応できず、黙り込んでしまう
- 家に帰ってから急に泣き出す or 体調を崩すことがある
→ これらは、“思考”や“言葉”が止まってしまう神経的なシャットダウン状態=フリーズ反応かもしれません。
✅ 背景にあるのは「社会的ストレスに対する神経の防衛反応」
- 注意の言葉やトーンが“脅威”として感知される
- 自律神経が急激に交感神経→背側迷走神経へ移行
→ 心拍・血流・筋緊張が一気に落ち、反応が止まる
特に「感覚過敏」「過去の注意体験が強く残っている」「人の評価に敏感」な子は、
ごく軽い注意でもフリーズしやすい傾向にあります。
✅ 専門家の視点:「沈黙=理解」とは限らない
作業療法士・心理士・特別支援教育の現場では、次のような点を観察します:
- 沈黙の最中の身体の状態(呼吸・表情・筋肉のこわばり)
- その後の回復にかかる時間
- 反応できるようになるきっかけがあるかどうか
ポリヴェーガル理論(Stephen Porges)
「社会的ストレスによって“安全ではない”と脳が判断すると、最終手段として“凍結=反応を止める”状態に入る」
✅ 家庭や学校でできる!「フリーズ状態の子」を守る5つの対応
① “問い詰めない”が鉄則(今は脳が動けない状態)
→ 「なぜ?」「わかってる?」「どう思うの?」は、脳にさらなる負荷をかけてしまう
② 表情と声を“ゆるめる”ことで安全サインを送る
→ 穏やかな口調・低めの声・顔の緊張をほどいた表情で話すと、神経が落ち着きやすくなる
③ 「今は何も言わなくて大丈夫」と明確に伝える
→ “返答しなければ”というプレッシャーを外すことで、回復が早くなる
④ 回復には“静かな時間”と“身体感覚の刺激”が有効
→ 一人になれる時間/揺れ・深呼吸・手を握るなどで、感覚からフリーズを解いていく
⑤ 後から「話せるようになったとき」に受け止める姿勢を
→ 「あのとき黙っちゃったね、びっくりしたよね」「今なら話せるかな?」など、感情を戻す場所の存在を伝える
✅ よくある誤解と真実
誤解 | 実際は… |
「何も言わない=反省している」 | 実は“脳が反応できていない”だけかもしれない |
「無視してる」 | 脳がシャットダウン状態にある可能性 |
「理解できたから静かになった」 | 安全が脅かされ、“固まっている”だけかも |
✅ 保護者・教育者の視点転換
- 「黙ってる=考えてる」と決めつけず、身体の様子も見る
- その場で“解決”させようとせず、回復を待つ視点を持つ
- 話せた瞬間・動けた瞬間を「戻ってこられた」と評価する
■ まとめ:「注意されたときに黙る子」は、“反省している”のではなく、“脳が止まっている”だけかもしれない
私たちが「伝えた」「伝わった」と思っていても、
その子の脳は「身動きできないくらいのストレス」を受けていたのかもしれません。
だからこそ大人は、
“言葉で理解させる”よりも、“安心を取り戻せる環境”をつくることが最優先です。