「やる前から無理って言う」

「ちょっと失敗するともうやめる」
「どうせできない」と投げやりになる…

そんな子どもを見て、つい
「根性がないな」「もう少し粘ってほしい」と思っていませんか?

でも実はその子、“諦めている”のではなく、
“失敗=脳にとっての脅威”になってしまっている可能性があります。

■ 子どもが“挑戦できない”とき、脳では何が起きているのか?

脳には「エラー検出システム(ACC)」という働きがあり、
間違いそうなとき、あるいは失敗したときにそれを感知し、
“やばい、やめよう”という抑制をかけることがあります。

このシステムが過敏だったり、失敗に対する経験が強く残っていると、
脳は 「エラー=危険」と認識し、行動を停止してしまうのです。

✋つまり「やらない」のではなく、「動けない」状態なのです。

✅ チェック!「エラー回避型」諦めやすさの特徴

  • やる前に「無理」「わかんない」と言って試そうとしない
  • やってみて間違えると、すぐ不機嫌になる/手を止める
  • できないと「バカにされた」と感じる
  • 結果より「間違えたこと」自体を強く気にする
  • 周りに「すごい子」がいると一切やろうとしない

→ これらは、“間違えること”が本人の脳にとって“耐えがたい不快刺激”になっているサインです。

✅ 背景にあるのは「脳の過敏なエラーレスポンス」と「感覚過敏」

  • エラーを検出する脳のシステムが敏感 → 小さな失敗でも過剰反応
  • 間違えたときの感覚(見られている、恥ずかしい)が強烈に残る
  • 視線・音・感情の刺激に過敏な子ほど、挑戦のストレスも大きい

🧠 結果的に「どうせ失敗するくらいなら最初からやらない」が、脳の自衛反応として定着してしまうのです。

✅ 専門家の視点:「挑戦の回避」は“意欲の低さ”ではない

作業療法・心理臨床の現場では、

  • “行動しない”=“やる気がない”と見ず、
  • 「脳がどう感じているか」「身体がどう反応しているか」を丁寧に観察します。

Carol Dweck(マインドセット理論)
「子どもが“失敗=能力の否定”と捉えると、挑戦自体を避ける防衛反応が強くなる」

✅ 家庭でできる!「失敗=安全」になるための5つの支援

① 失敗したときの“大人の表情・反応”をゆるくする

→ 大人が驚いたり急いでフォローしないことで、“脳にとっての脅威”を減らす

② 「できた/できない」ではなく「やったこと自体」を肯定する

→ 「始めたね!」「それをやろうと思ったんだね!」

③ “結果が出ない活動”を日常に増やす(遊びベース)

→ ブロック・創作・ぬりえなど、正解・間違いのない体験で脳の安心を取り戻す

④ 「失敗しても大丈夫だった経験」を明確に積ませる

→ 「間違えても怒られなかった」「失敗しても笑えた」体験の積み重ね

⑤ 周囲と比べない環境を意識的に整える

→ 競争・評価のない環境では、挑戦=快感の回路が育つ

✅ よくある誤解と真実

誤解実際は…
「根性がない」実は“エラーに過剰反応する脳の防衛反応”かもしれない
「すぐ諦める=やる気がない」“失敗することへの恐怖”で脳が行動を止めている
「自信がないだけ」自信の前に“安全に失敗できる神経の状態”が必要

✅ 保護者の視点転換

  1. 「がんばってない」のではなく、「脳が止まってるだけかも」と考える
  2. 「できたね!」よりも「やろうとしたね」を大切に
  3. “ミスをしたとき”に安心できる体験を重ねることで、挑戦の土台ができる

■ まとめ:「すぐに諦める子」は、“あきらめている”のではなく、“脳が止まってしまっている”だけかもしれない

大人が“もっと頑張ってほしい”と思う気持ちは当然です。
でも、その前に大切なのは、
「この子の脳は、失敗をどれだけ怖がっているんだろう?」と問い直すこと。

失敗しても安心できる経験こそが、
挑戦する力=レジリエンスの本当の出発点です。