「すぐ気が散る」「集中が続かない」その本当の原因は?
- 宿題に取りかかれない
- 少しの物音でも気がそれる
- 話しかけても“聞いてない”ことが多い
「性格かな?」「やる気がないのかな?」と思っていませんか?
実は、こうした子どもたちの中には、「耳からの情報処理」に困難を抱えている子が一定数いることが、感覚統合や聴覚処理の研究から明らかになっています。
目次
■ 聴覚刺激は「音を聞くこと」だけじゃない
私たちは音を聞くとき、単に「耳」で聞いているのではありません。
音の刺激は、耳→脳幹→大脳皮質へと伝わり、“覚醒”“注意の切り替え”“姿勢の安定”などを司る神経系全体に作用しています。
✨つまり「耳=集中のスイッチ」になることもあるのです。
✅ そもそも「耳からの情報処理」が苦手な子がいる?
- 話しかけても反応がない(聞こえていないように見える)
- 複数の音があると“何を聞けばいいかわからない”
- 急な音に過剰反応 or 全く気づかない
- 騒がしい場所ではパニックになりやすい
これらは「聴覚過敏」「聴覚鈍麻」「聴覚処理障害(APD)」など、聴覚刺激に対する神経系の調整力の未熟さによって引き起こされることがあります。
✅ 耳から脳を“調整”する──海外で注目の聴覚刺激トレーニングとは?
以下は実際に欧米の臨床・教育現場で導入されている科学的アプローチです。
1. The Listening Program(TLP)
- 特定の周波数に加工された音楽をヘッドホンで聞くトレーニング
- 集中・睡眠・情緒安定に効果を認める臨床報告あり
- → 音のフィルタリング機能(聴覚刺激の選別)を鍛える
2. Berard AIT(Auditory Integration Training)
- 音刺激を通じて、聴覚の過敏さ・注意力の乱れを整えるトレーニング
- → 自閉症・ADHDの子どもにも応用されている
3. 骨伝導×音楽(例:Tomatis法)
- 骨を通じて音を聞かせることで、前庭感覚+聴覚を同時に刺激
- → 姿勢・集中・読み書きにまで影響があるという報告も
✅ 家庭でできる「耳から整える集中環境のつくり方」
▶ 方法①:“脳が落ち着く音”を選ぶ
- 自然音(雨、川、木漏れ日)やホワイトノイズ
- 一定のリズムがあり、言葉が入っていない音源がおすすめ
- → 背景音として流すことで「聴覚のノイズキャンセル効果」
▶ 方法②:イヤホンではなく“骨伝導ヘッドホン”を試す
- → 音の過敏さがある子でも不快感が少なく、集中力・安心感UP
▶ 方法③:「静かな場所」でなく「落ち着く音環境」を探す
- 音のない環境=最適ではない
- → 子どもによっては「適度な刺激」がある方が集中しやすい
✅ よくある誤解と真実
誤解 | 実際は… |
「静かにすれば集中できる」 | 一部の子には“無音”が逆に不安や気が散る原因になることも |
「音に敏感=耳が良い」 | 脳が音を処理しづらく、過剰に反応しているだけ |
「BGMを流せば集中する」 | 音の“質”と“周波数”が重要。合わない音は逆効果に |
✅ OT・聴覚療法の専門家が見る「音×集中力」の真実
作業療法士や音楽療法士は、子どもの「集中力のムラ」「注意の切り替えができない」などの背景にある聴覚処理と覚醒レベルの関係を評価します。
Schafer et al. (2013)
「注意欠陥と診断されていた子のうち、3割以上に“聴覚情報処理の未熟さ”がみられた」
✅ まとめ:「音を整える」と、脳が目覚める
子どもの集中力を“がんばり”で引き出すのではなく、
「感覚の入り口=耳」を整えることで、自然と“脳が集中しやすい状態”に変わることがあります。
子どもに合った“音の刺激”を見つけることは、
机に向かえる子を育てる最初の一歩かもしれません。