「うちの子、体の動かし方がぎこちない気がする…」

  • 回る系の動きが苦手(でんぐり返し・逆上がり)
  • すぐフラフラする
  • 体育になると“急にやる気がなくなる”

これらの困りごと、実は単なる「運動神経の問題」ではないかもしれません。

見えない原因、それは──“前庭感覚”の未発達です。

■ 前庭感覚って何?

前庭感覚とは:

👂 耳の奥(内耳)にあるセンサーで、回転・傾き・加速・重力などの情報を脳に伝える感覚

この感覚は、以下のような日常動作に欠かせません:

  • 体を回す・傾ける・起き上がる
  • まっすぐ立つ・姿勢を保つ
  • 空間内で自分の位置を把握する

■ なぜ“体育”で困るの?

前庭感覚が弱いと、脳が「今、自分がどこを向いているか」「どう動いているか」をうまく処理できません。

結果として…

  • 体がグラグラする
  • 回るとすぐ気持ち悪くなる
  • 自分の体をうまくコントロールできない
  • 怖くて動きにブレーキがかかる

⚠️ だから「できない」のではなく「怖い or 気持ち悪いから避けている」ということも。

✅ チェック!前庭感覚が未発達な子に見られる特徴

  • ブランコや回転遊びを避ける
  • 高いところやバランスをとる遊びが苦手
  • 転びやすい、よくつまづく
  • 体育での回転技(でんぐり返し・側転など)を極端に嫌がる
  • 姿勢が崩れやすく、すぐに横になる

これらが当てはまると、前庭感覚の発達が追いついていない可能性があります。

✅ 家庭でできる「前庭感覚育てあそび」3選(毎日3分から)

1. クッションボール転がし

  • 床に寝て、親がクッションを押して“コロコロ”転がしてあげる
  • → 回転刺激を受け身で楽しむ

2. お布団ブランコ

  • 両端を持って、子どもを包んだ布団を左右に揺らす
  • → 安心感と揺れ刺激で前庭と深部感覚を同時に刺激

3. ゆっくりでんぐり返し練習

  • 頭を支えながら、ごっこ遊びで“丸まる感覚”を習慣に
  • → 回転への恐怖心を減らす

✅ 無理にやらせると逆効果!

  • 前庭感覚が未成熟な子に強い回転刺激を与えると、逆にパニックや不安を助長することがあります
  • 大切なのは「安心して楽しめる範囲から少しずつ慣らす」こと

✨ ポイントは、“揺れ”や“転がり”を“遊び”として提供すること

✅ 専門家の知見

  • 感覚統合療法では、「前庭感覚」はもっとも原始的で学びの基盤になる感覚とされています
  • OT(作業療法士)は「回転・重力・姿勢制御」などをチェックして、前庭の状態を評価・訓練

Ayres, J. (1972)
「前庭系は“動きの中で自分を知る”最初の感覚。これが未発達な子は、学びも落ち着きも不安定になりやすい」

✅ よくある誤解と真実

誤解実際は…
「運動神経が悪いだけ」感覚処理が未成熟なだけかもしれない
「やれば慣れる」感覚が未発達な子には“怖さ”が先に立つ
「サボってるのでは?」身体の内部で“不快・不安”が起きている可能性大

✅ 保護者のサポートの工夫

  1. “できない”ではなく“怖いのかも”という目で見る
  2. 揺れや回転を「楽しい体験」として積み重ねる
  3. “苦手な種目”の前に、軽くジャンプやゴロゴロをして“前庭スイッチON”する

■ まとめ:「体育が苦手」は、心の問題ではなく“感覚の準備”かもしれない

子どもが体育を嫌がる、運動を避ける――
その裏には、まだ発達の途中にある“感覚の地図”があるのかもしれません。

前庭感覚は、「自分の体を安心して動かせる」ための土台。
だからこそ、強制ではなく、“楽しい遊び”から育てることが最大の支援です。