「さっき言ったばかりなのに…」

「毎日同じことを何度も言ってる気がする」
「勉強したのに、すぐ忘れてしまう」

こうした“忘れっぽさ”を、
「記憶力が弱い」「集中してない」と片付けていませんか?

実は、“そもそも記憶に残るだけの情報が入っていない”
あるいは“脳のエネルギーが整っておらず、記憶処理に向かえない状態”かもしれません。

■ 記憶のメカニズムは、「入力 → 保持 → 出力」の3段階

記憶には、以下のような流れがあります:

  1. 入力(感覚的に受け取る)
  2. 保持(短期・長期記憶として保存)
  3. 出力(必要なときに思い出す)

✨ 忘れっぽさの多くは「②保持」の問題だと思われがちですが、実際には「①入力」が不十分であるケースがとても多いのです。

✅ チェック!“感覚入力不足”タイプの忘れっぽさの特徴

  • 話を聞いても“聞き流している”ように見える
  • 漢字や単語を何度書いても覚えられない
  • 指示を出しても、途中で内容が抜けている
  • 言った直後は覚えているが、すぐ頭から抜け落ちる
  • 何度も説明したのに、本人が「初めて聞いた」と言う

→ これらは、「覚えたのに忘れた」のではなく、「記憶として入っていなかった」可能性が高いです。

✅ 背景①:感覚の“入り口”の問題

  • 視覚認知の不安定さ:見た情報を正確に把握できない
  • 聴覚処理の弱さ:話された内容を意味ある形で保持できない
  • 注意の分散:情報が“脳の中で整理される前に”次へ流れてしまう

→ 記憶する前に、「脳がちゃんと受け取っていない」=“記憶以前の問題”がある。

✅ 背景②:“疲労脳”で記憶処理ができていない

  • 神経系が疲れていると、覚醒レベルが低下し、記憶に必要な“注意・整理・保存”が働かない
  • 特に感覚過敏や低覚醒の子は、脳が情報を保持する余裕がない
  • 記憶は“フル稼働している脳”ではなく、“適度に整った脳”でなければ機能しない

✅ 専門家の視点:「記憶=脳の整理力+感覚の受け取り力」

発達支援・作業療法・心理療法の領域では、

  • 「記憶できない」=脳の障害、ではなく
  • 「入力があいまい」or「脳の状態が整っていない」かをまず評価
  • 感覚統合・神経調整・認知的サポートの複合的支援が必要とされます

Gathercole & Alloway(2008)
「短期記憶の困難は、入力刺激の処理が断片化されていることに起因する場合が多く、記憶システム自体の欠損ではない」

✅ 家庭でできる!記憶の“入り口”と“脳の状態”を整える5つの方法

① 「見て聞いて動かす」マルチ感覚で覚える

→ 書くだけでなく、読んで、声に出して、ジェスチャーも加える

② 指示や説明は「短く・視覚とセットで」伝える

→ 例:「ごはん→歯みがき→パジャマ」→絵カードやホワイトボードで

③ 学習や説明の前に“脳を起こす”感覚刺激を入れる

→ 深呼吸/ストレッチ/軽いジャンプ → 覚醒レベルを安定化

④ “覚えた直後のリラックス時間”をつくる

→ 記憶の定着には「情報処理後の休息(沈静モード)」が不可欠

⑤ 忘れたときに“怒らず、入力からやり直す”

→ 忘れた=失敗ではなく、“入らなかった”だけと捉えて支援する

✅ よくある誤解と真実

誤解実際は…
「すぐ忘れる=記憶力が弱い」情報が脳に“入り切っていない”可能性が高い
「集中していないから覚えられない」脳が疲れていて“集中できる状態にない”かも
「何度言ってもわからない」言い方・タイミング・感覚刺激が合っていないだけかもしれない

✅ 保護者の視点転換

  1. 「何度言えば覚えるの?」より「どう言えば届くかな?」と考える
  2. 記憶=才能ではなく、“入り方”と“脳の状態”の問題として見る
  3. 「覚えてないこと」より、「覚える準備が整っていたか」に注目する

■ まとめ:「忘れっぽい子」は、“覚えられない”のではなく、“まだ覚えられる状態になっていない”のかもしれない

記憶力の問題ではなく、
「感覚入力がぼんやりしている」or「脳が疲れて処理しきれていない」だけ
そんな子どもたちがたくさんいます。

大人がすべきなのは、「もっと覚えなさい」ではなく、
「どうすればちゃんと“入る”のか?」を一緒に探してあげることです。