「こっち見て話聞いて!」が通じない子どもたち
- 声をかけても反応しない
- 授業中に先生の声が入っていない
- 集中が続かず、すぐ周りに気を取られる
「聞く気がない」「話を聞いてない」と思われがちですが、
実はその行動、“聴覚定位”という力が未発達なことが原因かもしれません。
目次
■ 聴覚定位とは?
🎧 「音がどこから来たかをとらえ、その方向に意識と注意を向ける力」のこと。
たとえば…
- 背後で名前を呼ばれたら振り向く
- 教室で先生の声に意識を集中できる
- 雑音の中から必要な音だけを聞き取る
これができるのは、耳と脳が連携して「音の方向」をとらえられているからです。
✅ チェック!聴覚定位が未発達な子の特徴
- 名前を呼んでも“無反応”だが、後で「聞こえてた」と言う
- 話している人を見ずに“別の方向”を見ながら返事をする
- 教室で「音のする方向」が分からず混乱する
- 周囲の話や物音にすぐ気を取られる
- 一対一では聞けるのに、集団になると話を聞けなくなる
→ これらが当てはまる場合、“聞いていない”のではなく“聞く準備=定位”が難しい可能性があります。
■ なぜ“聴覚定位”ができないと、話を聞けないのか?
人は音を聞くとき、「耳」ではなく「脳」で方向を判断し、注意をそこに向け直す(=選択的注意)ことで集中します。
聴覚定位が苦手だと…
- 音の方向が分からず、誰が話しているのか混乱する
- 複数の音が全部一度に聞こえて“うるさい”状態になる
- 結果的に話を聞くのが苦痛・困難になる
✅ これは「態度」ではなく「感覚処理の問題」
子どもが話を聞いていないように見えても、実際は…
🧠 脳が“音の方向と内容”を切り替えることに負担を感じている
つまり、「聞かない」のではなく、
「どこを聞けばいいか、脳が決めきれない」状態なのです。
✅ 専門家の視点:OTやSTはこう評価する
- 音がした方向に素早く顔や目を向けられるか(聴覚–視覚連携)
- 雑音の中から“目的の声”を選べるか(選択的注意)
- 音を聞いたあとに指示通りに行動できるか(聴覚記憶)
- → これらの力を「聴覚定位+聴覚処理」として評価
Dawes et al. (2008)
「聴覚定位の困難を持つ子は、教室での聴覚注意維持が著しく難しくなる傾向がある」
✅ 家庭でできる!“聴覚定位”を育てる遊び3選
① 音あてクイズ(左右どっち?)
- 子どもの背後で手を叩いたり、鈴を鳴らす
- → 「右?左?どっち?」と聞き、正しい方向を答える
② 指示を出す人を見つけようゲーム
- 複数人で輪になり、1人だけが指示を出す(例:「ジャンプ!」)
- → どの方向の声かをとらえ、反応する遊び
③ 音の宝探し
- 家のどこかで音を出し、それを頼りに子どもが見つけに行く
- → 音の方向・距離を感じ取る力を養う
✅ よくある誤解と真実
誤解 | 実際は… |
「聞いてない=注意不足」 | “どこから音がしたか”を処理できていないことも |
「反応が遅い=やる気がない」 | 音の方向を探してから注意を向けているだけ |
「返事しない=反抗的」 | 音を処理しきれずに“固まっている”可能性も |
✅ 保護者ができるサポートのヒント
- 正面から名前を呼ぶ/話しかける(音の方向を限定)
- 「聞いてる?」ではなく「今、こっちを見てごらん」から始める
- 環境音が多い場所では、先に「今から話すよ」と予告を入れる
■ まとめ:「聞いていない」のではなく、“聞ける状態になっていない”
音を聞くには、「音量」や「言葉の意味」だけではなく、
“どこから・誰が・何の目的で”の全体をとらえる感覚が必要です。
「聞いてない!」と叱る前に、
その子の“聞く準備”ができているか?に目を向けてみてください。