「ちょっと注意しただけで泣く…」

「頑張った後に崩れる…」
「失敗から立ち直れない…」

それって本当に「メンタルが弱い」「甘えている」「我慢が足りない」のでしょうか?

実はその子は、「がんばれない」のではなく、
“神経がもうがんばり切ってしまっている”のかもしれません。

■ 「がんばる」って、神経のどこを使ってるの?

私たちが何かに集中したり、気持ちを切り替えたり、我慢したりできるのは、
“自律神経系と前頭前野”という脳の働きによる“自己調整”がうまくいっているから。

でもこの調整には、エネルギーと“回復力”が必要です。

💡 つまり「がんばる力=耐える力」ではなく、
崩れたあとに“戻ってくる”力=神経の回復力」が本当の差なのです。

✅ チェック!「神経の回復がうまくいっていない」子の特徴

  • 少しのトラブルで長時間落ち込む/泣き続ける
  • 一度集中が切れると“戻ってこれない”
  • 我慢できるが、あとで“爆発”する(表面ではがんばってる)
  • 刺激の多い場面の後、急にグッタリする・不機嫌になる
  • 緊張が抜けない/リラックスできない

→ これらが当てはまると、「自律神経のリカバリー(回復)力」が未成熟な可能性があります。

✅ 「がんばれない子」は、“感情”より“神経系”が疲れている

感情の問題ではなく、神経系の“回復の遅さ”や“過敏さ”が原因の場合:

  • 注意される → 防衛反応で神経が緊張
  • 失敗する → 脳が「危機」と判断 → 落ち込み or 攻撃反応
  • 疲れる → 神経がオフにならず、イライラ・不眠・不安へ

🔁 一見“がんばってない”ように見えて、
実は“限界までがんばったあと”ということも。

✅ 専門家が見る視点:「レジリエンス=神経の回復システム」

発達支援・心理療法・作業療法では、
「子どものがんばる力」をこう捉えます:

  • がんばったあとに“落ち着きに戻れるか”
  • 崩れた気持ちを“神経が回復させられるか”
  • 自分で“落ち着く手段”を持っているかどうか

Porges(ポージェス)「ポリヴェーガル理論」
「人は“社会的安全感”を感じるとき、初めて神経が回復し、感情の調整が可能になる」

✅ 家庭でできる「神経の回復力」を育てるケア5選

① 「落ち着く感覚」を“日常化”する(習慣にする)

例:ハグ・お腹に手を当てる・タオルで包む → 深部感覚による安定

② がんばった“直後”にクールダウンの時間をつくる

例:静かな空間・1人時間・音楽・ふわふわしたもの → 自律神経を静めるルーティン

③ 自分で“落ち着きに戻る方法”を選ばせる

例:「イライラしたときは、○○する」「泣いたら、△△で休憩する」

→ 「気持ちを戻す術=レジリエンスの習得

④ “回復できたこと”を認める(成果ではなくプロセス)

「泣いたけど、戻ってこれたね」
「一回怒ったけど、落ち着いて話せたね」

⑤ “がんばる量”を減らすことで、回復を早める

常に100%出力ではなく、“神経を守るためのセーブ”も大事

✅ よくある誤解と真実

誤解実際は…
「がんばれないのは性格」神経系の“調整と回復力”の未発達が原因かもしれない
「我慢ができない」一度“緊張ゾーン”に入ると抜け出せない
「泣いたら負け」泣いた後に“戻ってくる”力があるかどうかが本当のレジリエンス

✅ 保護者の視点転換

  1. がんばる姿勢だけでなく、“回復の仕方”にも注目を
  2. 「いつ戻ってこれる?」を一緒に考える
  3. その子にとって“安全に戻れる場所・方法”を確保する

■ まとめ:「がんばれない子」は、“回復する力”がまだ育っていないだけかもしれない

がんばるとは、耐えることでも、泣かないことでもありません。
「くずれたあとに戻ってくる力=回復する力」こそが、本当の“がんばる力”なのです。

だからこそ、叱る前にこう問い直してみてください:
「この子の神経は、いまどれだけ消耗しているだろう?」と。