「うちの子、暇さえあればゲームばかり…」

  • 声をかけても反応なし
  • ゲームを取り上げるとパニック
  • 外遊びや読書には全く興味を示さない

もしかするとその行動、ただの依存ではなく、“感覚的な自己調整”の手段かもしれません。

■ ゲームにハマる子の“身体の奥にある”理由

ゲームは以下のような特性を持っています:

  • 明るく動きのある視覚刺激
  • 一貫した音のパターンと操作の手応え
  • 常に反応が返ってくるフィードバック

これらは、実はある特定の感覚が弱い子にとって、“足りないものを補う刺激”になるのです。

■ 視覚刺激依存=「感覚不足の代償行動」?

🧠 子どもがゲームにハマるのは、“感覚的な空白”を埋めるための自己調整の一種である。

感覚統合理論において、「視覚優位(visual seeking)」の子どもは、

  • 深部感覚や前庭感覚(バランス感覚)が未発達で、自分の体の位置が分かりづらい
  • 結果として、「一番確実に自分を感じられる感覚=“視覚”」を過剰に使おうとする
  • その最たるツールが、常に動く・明るい・反応するゲーム画面というわけです

✅ チェック:あなたの子は“視覚優位”タイプ?

  • ゲームや動画を見ているときだけ落ち着く
  • フラッシュや点滅を好む
  • 絵や写真など“見えるもの”を強く記憶する
  • 体を使う遊びよりも“目”を使う活動に偏る
  • 暗いところや複雑な背景では混乱しやすい

これらに複数当てはまる場合、視覚に頼らざるを得ない感覚構造を持っている可能性があります。

✅ どうすればいいの?──視覚以外の感覚を“育てる”ことが鍵

【ステップ1】視覚以外の感覚を刺激する遊びを増やす

感覚遊び例
深部感覚重いものを運ぶ、押し相撲、ギュッと抱きしめ
前庭感覚ブランコ、ゴロゴロ転がる、トランポリン
触覚粘土遊び、砂場、冷たい・温かい遊び

【ステップ2】感覚が満たされたあとに「ゲーム以外」の選択肢を用意

→ 先に身体を満たしておくことで、ゲーム以外の刺激にも興味が向きやすくなります

✅ 完全にゲームを取り上げると逆効果?

  • 感覚的に“満たされる手段”を奪うと、子どもはより不安定になりやすい
  • 大切なのは「やめさせる」ではなく、「代替の感覚刺激を提供する」こと

📌 ゲームの裏にある“感覚ニーズ”を理解して、そこに寄り添うアプローチが最も効果的

■ 専門家の知見

  • Dunn’s Sensory Processing Framework(感覚処理障害理論)によると、感覚追求型の子どもは“自己調整”として刺激を求めるとされています
  • *Jean Ayres(感覚統合理論の創始者)*も、「行動の背景には必ず感覚的な動機がある」と述べています

✅ 保護者のための行動指針

  1. 禁止よりも理解と代替を
     → ゲームが与える刺激の“代わり”を用意する
  2. 朝・帰宅後・夕方など、感覚遊びのルーティン化
     → 生活の中で“視覚以外”の刺激を自然に補う
  3. 週1回でも“五感が全部使われる遊び”を
     → 例:自然遊び、焚き火、登山、農作業体験など

■ まとめ:「ゲーム依存」じゃなくて、「感覚依存」だった?

“落ち着かない子”“ゲームばかりの子”は、
実は「感じたいけど、感じられない」ことへのSOSを出しているのかもしれません。

大人の視点で“行動だけ”を見てしまうと見えないけれど、
身体の感覚を育てていくことで、自然とゲームへの執着が緩むケースは多々あります。