「うちの子、野菜も肉もほとんど食べません…」

  • 食事のたびにグズる
  • 決まった物しか口にしない
  • 新しい食材は匂いだけで拒否!

「味が嫌いなの?」「ただのわがまま?」
そう思っていませんか?

実はその“食べられない”には、味覚ではなく“口の中の感覚処理”の問題が関係しているケースが少なくないのです。

■ 原因は「味覚」ではなく「口腔内の感覚過敏」かも?

私たちは食事をする際に、

  • 食べ物の硬さ、粘り、粒感
  • 舌への刺激、歯で噛む圧力
  • のどの奥に流れるタイミング

など、非常に多くの“感覚入力”を処理しています。

この口腔感覚が未発達だったり、過敏すぎたりすると、子どもは食事そのものを「不快」「怖い」と感じるようになります。

✅ チェック!「口腔感覚過敏」が疑われるサイン

  • 熱い/冷たい/酸っぱいものに極端に反応する
  • 食感にこだわる(例:サクサクしか食べない)
  • 歯磨きを異常に嫌がる
  • 舌や口の中をよく触っている
  • 口に入れた途端、吐き出すことが多い
  • 食べ物の匂いや見た目で拒否する(味以前の拒絶)

これらが複数当てはまるなら、単なる偏食ではなく「口腔感覚の過敏」が原因の可能性があります。

✅ 本人も“自分で理由が説明できない”のが特徴

感覚的な不快感は、子ども自身にも明確な理由がわかりません

「なんで嫌なの?」→「わかんないけどムリ!」
→ それを「わがまま」ととらえるのは、的外れなことも…

✅ 専門家の見解と科学的根拠

  • 感覚統合療法では、「口腔感覚過敏」は“食行動の問題”ではなく“感覚処理の問題”と分類
  • OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)によるアセスメントでは、“食べる”前の「感じ方」そのものを観察します

Farrow & Coulthard (2012)
「感覚過敏は食選択の80%に影響を及ぼす。味覚より“食感と口腔刺激”の方が大きな要因」

✅ 家庭でできる!口腔感覚の支援アプローチ

1. 歯ブラシを“ツール”として使う

  • 食事の前に歯茎や舌を「くすぐり磨き」で刺激
  • → 食前に“口の準備運動”をすることで食感への耐性が上がる

2. 口の中が喜ぶ刺激を日常に取り入れる

  • ストローで吸う、噛むグミ、氷をなめる、ガムを噛む
  • → 舌・唇・頬への刺激に慣れるトレーニング

3. 食べ物は「味」より「触感の幅」から広げる

  • 例:苦手な野菜を「サクサク→蒸す→トロトロ」と段階的に変えて慣らす

4. “無理に食べさせない”で信頼感を築く

  • → 口の過敏さがある子に無理強いは“感覚トラウマ”になり、逆効果

✅ よくある誤解と真実

誤解実際は…
「好き嫌いが激しいだけ」感覚的に“刺激が強すぎて食べられない”ことも
「一口でいいから食べなさい」一口が“大事故”のように感じられる
「甘やかすとダメ」感覚への配慮と逃避はまったく違います

✅ 支援現場ではどう扱う?

  • ST(言語聴覚士)やOT(作業療法士)は、「摂食機能評価」「口腔感覚テスト」に基づき支援
  • 専門施設では、テクスチャー(食感)と感覚刺激の“段階的慣れ”を用いる

Ayres Sensory Integration®認定OTによる支援では、
「噛む力」「飲み込む感覚」「味以外の感覚処理」を多面的にチェックします

✅ 保護者ができるサポートの心得

  1. 「食べられない」は“努力不足”ではない
  2. “どう感じているのか”を想像することが第一歩
  3. 安心できる食材から、“似たもの”をつなげて広げていく

■ まとめ:「偏食の裏には、“感覚の苦しさ”が隠れているかもしれない」

子どもが「食べられない」と訴えるとき、
それはただ味が嫌いなのではなく、「口の中で感じる刺激がつらい」という目に見えないストレスなのかもしれません。

親がその事実に気づくだけで、子どもは“無理に食べさせられる不安”から解放され、自然と安心して食と向き合えるようになります。