「考えていないわけじゃないと思うんです…」

「でもなぜか、進まない。間違える。固まる。」

プログラミング教育においてよく見られるこのつまずき。
でも実は、それは“論理的思考力が弱い”からではないのかもしれません。

🔍 もしかしたら原因は──

“ワーキングメモリ(作業記憶)の容量”にあるのかもしれません。

■ ワーキングメモリとは?

👉「今、頭の中で情報を一時的に保持しながら処理する力」

例えるなら、頭の中の“作業デスク”の広さのようなものです。

この机が狭いと…

  • 手順を思い出しながら、コードを書く
  • 条件を考えながら、先を予測する
  • 間違いを探しながら、修正する

といった“同時進行の思考”が、処理オーバーで止まってしまうのです。

✅ プログラミングは「ワーキングメモリにやさしくない」

プログラミングで必要な処理脳の負荷
手順を保持しながら処理二重タスク=高負荷
コードの流れを一時的に保つ一時記憶の連続使用
バグを発見して修正情報の同時比較・更新
条件分岐を理解する複数の選択肢を同時に保持

→ つまり、「思考」よりも「処理」が大変な教科」と言えます。

✅ 「考えてない」のではなく、「処理しきれない」

子どもは、“手が止まっている”ように見えても、
頭の中はフル回転していることがあります。

でも:

  • 情報を並べておけない
  • 一度に複数の要素を保持できない
  • 途中で「何やってたか」を見失う

結果的に:

❌「わかってない/やる気がない」
ではなく
✅「頭の中が渋滞して身動きできていない

という状況に陥っているのです。

■ まず教えるべきは“論理”より“整理のしかた”

論理的思考は、「順序」と「構造」が理解できてこそ機能します。
でも、ワーキングメモリに負荷がかかっている状態では、その“前提”が崩れています。

だからこそ、

「どう考えるか」よりも、
「どう整理して見せるか」を先に整えるべきなのです。

✅ 家庭や現場でできる“整理力サポート”

工夫目的実践アイディア
1ステップずつ声に出して確認手順の保持を助ける/“見通し感”を脳に与える🔸「じゃあ、まず○○して、次に□□ね」と1つずつ手順を声に出して確認🔸例:「1. 緑の旗を押す 2. キャラが動く 3. 止まったらOK?」🔸子ども自身に「今やること言ってみて」とセルフトークを促すのも◎
図やカードでフローを“目に見える形”にする頭の中で順序を組む負担を軽減🔸Scratchやロボット教材を使う前に、紙に手順カードを書き出して並べる🔸例:①スタートボタン ②前に3歩 ③右に曲がる…など、カードでフロー作成🔸エラーが出たときは、「どのカードの順番がズレたか?」を一緒にチェックする流れに
「今何してる?」と確認しながら進める作業の“現在地”を自覚させて迷子を防ぐ🔸「今どこまでいった?」「次は何をしたい?」と状況を実況させる習慣をつける🔸「お料理みたいだね。今は材料切ってるところ?」など、生活の比喩で進行確認を助ける🔸進捗ボード(付箋でもOK)を使って「今ここ」を指さしながら進めると安心感UP
コードの前に“擬似プログラム”で整理する実行前に思考の順番を頭と手で可視化🔸いきなりコードを書く前に、紙で「もし〜なら→こうする」の流れを書く練習🔸例:「もしボタンを押したら → 歩く → ぶつかったら止まる」🔸「プログラムを書く」のではなく、“考えを並べる時間”を設けることが失敗への耐性を育てる第一歩

コードやブロックの理解よりも、
今どこをやっていて、次に何が起きるのかを想像できること」が、安心と自信の土台になります。

✅ まとめ:「プログラミングにつまずく=論理が弱い」ではない

子どもの中には、
「考えたいのに、思考がまとまらない」
「わかってるのに、処理が重くて動けない」
そんな“頭の中が詰まってしまう”タイプの子がいます。

プログラミング教育においては、
論理よりもまず、“脳の作業環境”を整える支援が必要なのです。