「やり方はわかってるのに、手が止まる」
「ミスした瞬間に、完全にフリーズする」
「“どうせ間違えるし…”とあきらめてしまう」
それ、やる気の問題ではないかもしれません。
もしかしたら──
“ミスを恐れる脳”が、探索をシャットダウンしているのかもしれません。
目次
■ プログラミング教育=“失敗”が前提の学び
プログラミングの本質は「トライ&エラー」。
思考 → 実行 → エラー → 修正 → 成果、というサイクルを繰り返します。
でもここで見落とされがちなのが:
「エラーが怖い脳」には、この構造が負担になりやすいという事実。
✅ 「間違えること」に過敏な子の脳では、探索が止まる
- プログラムが動かない
- バグが出る
- 答えが見つからない
…という状態に対して、
「もっとやってみよう!」と思える子もいれば、
「自分がダメなんだ」と感じて動けなくなる子もいます。
この差の背景にあるのが、“脳のエラー処理と情動のつながり”です。
■ 「エラー=否定」と感じてしまう神経状態とは?
脳は、本来「間違い」を“修正のための情報”として処理します。
でも、情動系が過敏な子、安心感が足りない子、自己否定傾向が強い子は:
エラー(ミス)=自分がダメだと証明された
→ 行動停止・回避・感情の爆発に至るケースも。
これが、プログラミング学習で見られる:
- フリーズする
- あきらめが早い
- トライしない
という“やらないように見える子”の正体です。
✅ 認知的柔軟性が試される学び=「安全な土台」が必要
プログラミング教育が問うのは、「正しさ」ではなく:
- 複数のルートから考える力
- エラーを見直して組み直す力
- 最初の失敗から学ぶ力=認知的柔軟性
でもこれは、「心が安全であること」が前提で初めて発揮できる力です。
✅ 「正解が1つじゃない教育」には“安心できるしくみ”が必須
「答えが1つじゃない」って素晴らしい──
でも、“正解がない不安”に耐えられない脳もある。
▶︎ だからこそ必要なのが、“試行錯誤の安全基地”
- 間違えても、人格は否定されない
- 途中まででもOK
- 失敗しても価値がある
→ こうした“情動安全性”があって初めて、脳が探索モードに入れるのです。
✅ 家庭・教育現場でできる支援のヒント
工夫 | 目的 | 実践アイディア |
---|---|---|
✅ エラー時に「なにが起きた?」と一緒に観察 | ミス=情報と捉える習慣を育てる | 🔸エラーが出たとき、「どうしてこうなったと思う?」ではなく「何が起きてるかな?」と実況中継のように状況を一緒に整理🔸例:「エラーってことは、コンピュータが困ってるってことかもね。何に困ってるのかな?」🔸ホワイトボードに“わかったことメモ”を一緒に書くと、視覚的に整理できて安心感UP |
✅ 完成より“途中の工夫”を褒める | 結果より探索のプロセスに注目 | 🔸「この考え方おもしろいね!」「ここで止まっても、工夫は見えてたよ」など、途中のアプローチや切り口に注目して声をかける🔸親や先生が「失敗したコードを見せて、“こう考えたけどうまくいかなかった!”」と見せるのも効果的(失敗モデルの共有) |
✅ 「正解じゃなくてもいい」を明文化 | 認知の柔軟性を引き出す言語環境 | 🔸「このプログラムは“どうやって考えたか”が大事なんだよ」「1回でうまくいく方がレアだからね」など、“試してOK”な前提を言葉にして繰り返す🔸壁に「エラー=成長のヒント」など安心ワードのポスターを貼っておくのも◎ |
✅ 書かずに“口で考える時間”を先に作る | 視覚+言語で思考の見通しを確保 | 🔸いきなり画面に向かわず、まず「どうやってやる?」を**口で言ってみる“プチブレストタイム”**を設ける🔸親子・教師と子どもで、「Aを押したらどうなる?」「Bのときは?」など、操作を“口シミュレーション”してからコードに入る🔸マグネットや付箋で「もし〜なら→こうする」などフローチャートを一緒に並べて考えると◎ |
✅ まとめ:プログラミング教育=“自己否定しない脳”を育てる訓練
- 答えが1つじゃない
- 失敗から学ぶ
- 試行錯誤を楽しむ
これらは、認知力だけでなく“情動的な安全”が支えている。
だからこそ、
「コードを書く」より前に、「安心して書ける場」が必要なんです。