「起きてるのに動かない」「話しかけても反応が鈍い…」

  • 布団から出られない
  • 着替え・朝食・支度に時間がかかる
  • 準備はできているのに、ぼーっとして動かない
  • 声をかけても返事がなく、1つ1つに時間がかかる

それ、実は「怠けている」でも「眠い」でもなく、
“脳の覚醒レベル”がまだ起きていない状態かもしれません。

■ 「覚醒レベル」とは何か?

覚醒とは、神経科学における「脳の活動モード」のこと。
起きていても、脳が“働く準備ができていない”状態では、行動・注意・感情の反応が鈍くなります。

🧠 朝起きた=すぐフル稼働、ではなく、
脳が仕事を始めるまでに時間がかかる子」がいるのです。

✅ チェック!「低覚醒」タイプの子に見られる特徴

  • 朝の動きがとにかくスロー(着替え・食事に時間がかかる)
  • 目は開いていても、反応が遅い・ボーッとしている
  • 声をかけても聞こえていないように見える
  • 学校に着いてもしばらく集中できない
  • 朝よりも昼や夜のほうが活発

→ これらは「本人のやる気」ではなく「脳がまだ起きていない」サインの可能性があります。

✅ なぜそんな状態になるのか?──脳と感覚の関係

私たちの脳は、以下のような感覚刺激によって目覚めていきます:

  • 前庭感覚(揺れ・回転・傾き)
  • 深部感覚(筋肉や関節への圧力・動き)
  • 触覚・視覚・聴覚などの外界刺激

これらの刺激が不足していると、脳が「今はまだ寝てていいんだな」と判断し、起床後も“ぼんやりモード”が続くのです。

✅ 専門家の知見:覚醒=「感覚で起こす」もの

Ayres (感覚統合理論)
「脳の覚醒レベルを整えるには、神経系に“適切な感覚刺激”を与える必要がある」

OT(作業療法士)やST(言語聴覚士)は、
子どもの“朝の行動”を評価する際に、以下の点を観察します:

  • 覚醒までにかかる時間
  • 動き出しのパターン(きっかけになる感覚)
  • 刺激の種類と強さによる反応の違い

✅ 家庭でできる!朝に「脳を起こす」感覚刺激5選

① リズム刺激(体を一定のリズムでゆする)

→ 例:左右に体を揺らす/親子で“ラジオ体操風ゆれ”
→ 前庭感覚のスイッチをON

② 関節刺激(関節を押す・引く)

→ 例:手や足を軽くギュッギュッと押す「関節プッシュ」
→ 深部感覚から覚醒を促す

③ 温度刺激(冷たい水・温タオル)

→ 例:朝イチに冷水で顔洗い/あたたかい蒸しタオルで首元を温める

④ 音と光の刺激(自然な音と明るさで“朝”を感じさせる)

→ 自然光+鳥のさえずり音/カーテン自動開閉も◎

⑤ “ひとことルーティン”を決める

→ 例:「さあ、朝がきたよ!」の合言葉で脳にスイッチを入れる

✅ よくある誤解と真実

誤解実際は…
「朝が弱い=やる気がない」覚醒システムがまだ準備中なだけ
「何度言っても動かない」感覚刺激が足りず、脳が“始動モード”に入れていない可能性
「もっと早く寝かせればいい」睡眠時間だけでなく“起床後の刺激”も重要

✅ 保護者ができる“朝の整え方”

  1. 「声かけ」より「感覚刺激」から始める
  2. 朝の一連の流れを“毎日同じ順番で”
     → 脳に“覚醒パターン”を学習させる
  3. “動き出せたこと”をしっかり認める
     → 「早くして」ではなく「動き出せたね、すごい!」の声かけ

■ まとめ:「朝が苦手」は、“脳の準備”が追いついていないだけかもしれない

大人は「起きてるんだから動けるでしょ」と思いがちですが、
子どもの脳は「まだ仕事を始めていない」状態かもしれません。

大切なのは、“動けない理由”を理解して、その子に合った目覚め方を見つけてあげること。

それが、毎朝のバトルを減らす最初の一歩です。