「そんな音で泣くの!?」と驚いたことはありませんか?
- トイレの自動乾燥機で耳をふさぐ
- 掃除機やチャイムの音にパニック
- 大勢が話している教室で固まって動けなくなる
それ、ただ「耳が良すぎる」わけではありません。
“聴覚過敏”という、音に対する感覚の処理が過敏になっている状態が原因かもしれません。
目次
■ 聴覚過敏ってどういう状態?
聴覚過敏とは:
🎧 脳が“音の刺激”を必要以上に強く、あるいは怖く・不快に感じてしまう状態
つまり…
- 音そのものが「痛い」「怖い」「混乱する」ように感じる
- 特定の音だけが異常に大きく感じられる
- 音を聞き分けるのが苦手で「うるさい」状態に耐えられない
✅ チェック!聴覚過敏の子によくある特徴
- トイレのジェット音・掃除機・チャイムを極端に嫌う
- 雑音の中で話しかけられても“聞き取れない”
- 大勢の声が苦手で教室で静かになる
- 突然耳をふさぐ・その場から逃げようとする
- 自分が出す音(歌声、足音)は平気
→ これらが当てはまる場合、聴覚刺激の処理が“過敏すぎる or 混乱している”可能性があります。
■ 「耳がいい」わけではない、脳の処理の問題
大人は「音量が大きいか小さいか」で判断しますが、
子どもは「脳がその音をどう感じたか」で反応します。
✅ 音量が小さくても“不快”と感じることがある
✅ 一つの音を“耳が拾いすぎて”他の音が聞こえなくなる
✅ 周囲の“何気ない音”が、本人には「爆音」に感じられる
つまり、音の感じ方の“フィルター機能”が弱いために起こる反応なのです。
✅ 日常生活への影響は?
- 集団生活がつらくなる(教室のざわめき、行事の音)
- 学習に集中できない(鉛筆の音、人の咳払いなどが気になる)
- 外出を避けたがる(駅や商業施設のアナウンスやBGMが苦痛)
- 突然パニックになる(「なぜ怒るの?」と大人が理解できない)
✅ 家庭でできるサポートのポイント
1. “避ける”ではなく“安心して過ごせる環境”をつくる
- ノイズキャンセリングイヤーマフや耳栓を“安全道具”として使う
- → 恥ずかしいと思わせず、「自分を守る選択肢」として教える
2. 静かな場所・時間を確保する
- 帰宅後や人混みのあとに“静かな一人時間”をつくる
- → 脳の音処理をリセットする時間が必要
3. 日常音に“慣れる練習”は“安心とセット”で少しずつ
- 例:掃除機のスイッチを子どもに押させる → 徐々に“予測可能な音”にしていく
✅ 支援現場での扱い
- 感覚処理障害(SPD)の1種として評価対象になる
- 作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)が、「音の処理と行動の関係」を見て支援
Miller et al. (2007)
「聴覚過敏の子は、単なる聴力では測れない“音に対する脳の反応パターン”に困難を抱えている」
✅ よくある誤解と真実
誤解 | 実際は… |
「耳が良すぎるのかも」 | 聴力は正常。脳の感覚処理の問題 |
「うるさい場所が嫌いなだけ」 | 小さな音でも苦痛に感じることがある |
「甘やかさずに慣れさせるべき」 | 無理な慣れはパニックや音恐怖を悪化させる可能性あり |
✅ 学校・園での配慮例
- マイクやチャイムの使用前に「予告」をする
- 音の多い行事では後方の席に配置
- イヤーマフ・耳栓の使用を認める
- 音に疲れたときの“退避スペース”を確保する
■ まとめ:「音に敏感」は“育てにくさ”ではない
子どもが音に驚く・逃げる・泣くとき、それは「感じすぎてしまっている」からかもしれません。
耳は正常でも、脳の感覚フィルターが未発達なだけ。
その仕組みを理解し、環境を整えてあげることで、子どもは少しずつ“音と仲良くなる”力をつけていきます。