──実行順を“仮想で並べる力”が弱い子のつまずきとは
「口では“わかってる”って言うのに、なぜか動けない」
「“これやって”に“うん”と返事するのに、手が止まってる」
「順番にやるだけの課題なのに、バラバラに処理してしまう」
こうした子どもに対して、大人はつい──
「考えてないのかな?」
「集中してないだけでは?」
「やる気の問題?」
と思ってしまいがちです。
でも実は、それ以前の問題があるかもしれません。
それは──
“身体をどう動かすか”という順序処理のしくみが、まだ育っていないということ。
■ 頭の中で「並べる力」が必要なのは、プログラミングだけじゃない
プログラミングでは、
実行順(コードの順番)を頭の中で組み立てる力が必要です。
たとえば:
python
コピーする編集する
if ボタンが押されたら:
→ 音を鳴らす
→ 画面を光らせる
→ 1秒待つ
このような「手順の並び」は、コード上の論理だけでなく、
“脳の中の仮想空間”で順番を思い描く力によって支えられています。
✅ 実はこれ、「身体の動かし方」と同じしくみで動いている
日常生活でも、子どもたちは順序処理を行っています。
- 着替える → 靴を履く → 出かける
- 手を洗う → タオルで拭く → 食事をする
- 算数の問題を読む → 計算する → 書く
このような身体的な行動の順番を処理する力と、
プログラム上での処理順の構成力は、実は脳の同じ領域(前頭葉+視覚ワーキングメモリ)に支えられているのです。
✅ 「頭の中で並べられない子」は、言われたことを“コード化”できない
- 指示をそのまま再現できない
- 行動に落とし込むまでに時間がかかる
- 一部を飛ばす/順番が前後する
- 全体の構造が見えず、手が止まる
これは、理解力ややる気の問題ではなく、
👉 「頭の中で順番を仮想的に組み立てられない状態」と考えるのが自然です。
✅ 視覚ワーキングメモリが弱いと“順序を記憶できない”
視覚ワーキングメモリとは:
👉 「目で見た情報や順序を、一時的に保持しながら処理する力」
この力が弱いと…
- 手順を見ていたのに、次の瞬間には忘れている
- 全体を見ながら今の場所を処理できない
- 実行中に“どこまでやったか”があやふやになる
→ 結果、「プログラミング的に考える前に、動けない」という状態に。
✅ プログラミング教育の前に、“順序処理”の土台を整えるべき子がいる
大人が思う:
「このコード、順番に実行してね」
→ 子どもにとっては:
「順番にって何から?」「途中で混ざる」「え、次どこ?」
という“頭の中の並び替えエラー”が起きているかもしれません。
✅ 家庭や教育でできる支援のヒント
工夫 | 目的 |
✅ 手順を図解・カード・アイコンで見える化 | 視覚情報で順序を整理できるようにする |
✅ 身体を使った「順序ゲーム」から始める | 身体で順番を感じる練習(例:ジャンプ→しゃがむ→手を叩く) |
✅ 「次はなに?」と声がけし、言語化を促す | 仮想の順序処理を言葉で補助する |
✅ コードを書く前に「フローチャート」作り | 書くより先に順序を視覚で整える |
✅ まとめ:「わかってるのに動けない」子は、“順番を処理する脳の土台”が未発達なだけ
プログラミング=論理思考、の前に、
“順番に並べて処理する身体的・視覚的な力”が必要です。
だからこそ、
「どうしてわからないの?」ではなく、
「この子にとって、“順番”はどんなふうに見えているのか?」
という視点が、最初の一歩になります。