「うちの子、握り方が変なんです…」

小学校低学年の保護者相談でよくあるのが「鉛筆の持ち方」問題。

  • 変な持ち方で力が入りすぎる
  • 書くとすぐに疲れてしまう
  • 字が曲がる、ガタガタになる

先生や親も「正しい持ち方を練習しなきゃ!」と矯正しようとしますが…実はその“握り方”をいくら直しても効果がない場合があるのです。

■ 本当の問題は“握り方”ではなかった

子どもが鉛筆をうまくコントロールできない大きな原因は、前腕と手首の「安定性(支持力)」不足にあります。

つまり…

✍️「動かす力」ではなく、「支える力」が弱いと、
いくら正しく握っても字はうまく書けないのです。

■ どうして支える力が大事なの?

大人は無意識にやっていますが、「書く」という動作は:

  • 肘が固定されて
  • 手首が安定し
  • 指先だけが細かく動く

という3つの要素がバランス良く働いて初めてスムーズになります。

でも支える力が弱いと…

  • 肘がグラグラ → 字がガタガタ
  • 手首が落ちる → 筆圧が安定しない
  • 手全体が力みすぎる → すぐ疲れる

という現象につながります。

■ 海外の作業療法士も注目:前腕・手首の筋肉が字の「土台」

アメリカ作業療法士協会(AOTA)やカナダの教育支援プログラムでは、Fine Motor Readiness(微細運動の準備力)の中に「proximal stability(体幹や上肢の安定性)」を含めて評価しています。

Case-Smith et al. (2000):
「字を書く能力は、手の巧緻性よりも“安定した姿勢と上肢の固定”により左右される」

✅ 家庭でできる「支える力」トレーニング3選(1日3分)

1. 手首ぐるぐるコロコロ

  • テーブルの上にハンドタオルを置き、手のひらで前後左右にコロコロ動かす。
  • → 手首と前腕の協調性を鍛える

2. 椅子逆立ちチャレンジ

  • 座面に手をついて、お尻を浮かせて10秒キープ(椅子が滑らないよう注意)
  • → 肘・肩の固定力を高める

3. 机の下にぶら下がるごっこ

  • 机の裏に手をかけて「ぶら下がるマネ」。静的筋力と握力の発達に効果的。

✅ それでも「持ち方」気になる方へ

実は、“正しい鉛筆の持ち方”は発達の過程で自然に身につくもので、未熟な時期に無理に矯正すると逆に混乱することもあります。

AOTAによると、「持ち方を指導するのは7歳(小2)以降でOK」という報告も。

✅ 書く力は「体で支える」から始まる

子どもが字を書くときに、

  • すぐに疲れる
  • 筆圧が安定しない
  • 握り方がなんか変

といった場合、それは「身体がまだ字を書く準備ができていない」サインかもしれません。

焦って鉛筆を直さずに、まずは身体の土台を整えてあげましょう。

補足:参考文献・出典

  • Case-Smith, J., & O’Brien, J. C. (2010). Occupational Therapy for Children.
  • American Occupational Therapy Association (AOTA).
  • Canadian Occupational Performance Measure (COPM) 研修資料。